Masuk※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。「いやいやいやっ!無理だっつーのっ!!美鈴センパイっ!この量はありえねぇっ!!」 「………………すー………すー………」 「とり先輩が言うなら…やるしかない」 「はい、陸実くん暴れない。海里くんは寝ない。空良くんはまずノート開いてくれるかな?」とある事務所の一室で私は三人を目の前に鞭を奮っていた。 いや、だってね? 私達が卒業して、後輩の三人がまだ在学中の高校。 彼らは芸能人になる為に日々努力を重ね、そしてものの見事に勉強がおろそかになった。 その所為である事が起き、呼び出されたのは私。 私は彼らの保護者ではないんだけど…。 でも心配で心配で…だって、騙されやす過ぎて…。 「美鈴センパイ。何故か答えが7万になったんだけど」 「なんで?ちょっと待って?陸実くん、今国語やってるんだよね?」 「すー…」 「ほら、海里くん。起きて」 「とり先輩。ノート開きました」 「うん。じゃあ早速取りかかってくれる?空良くん」 うん。絶対に心配になるでしょ、これ。 何このカオス。 何でこんな事になった? 私は腕を組んで椅子の背もたれに凭れかかって記憶を捜索し始めた。ママに選択を迫られた時、私は当然、誰も選べなかった。 いやだってさ?男性が怖いって言ってるじゃない? ずーっと言ってるよね? 選べる訳ないよね? でも、ママが言うにはそれが危険だって言う。 じゃあどうしたら良いの? って思ってた時に、陸実くんから連絡が来た。 『デビューが決まったんだけど、事務所の人が話している日本語が理解出来ない』と。 書いている意味をこっちが理解するのには、ちょっと時間がかかり過ぎたので、私は彼らに会いに行く事にした。 …んだけど、それに待ったをかけたのはママだった。 「美鈴。いいのね?」 「え?何が?」 「その呼び出しに答えるって事は、年下組に行くって事になるけど」 「えっ?そうなのっ?」 「このタイミングで連絡が来るって事はそうでしょう。今は美鈴…ヒロインにとってルート選択の選択肢画面みたいなものでしょうから」 「選択画面…」 言われて私はもう一度手にあ
「丑而摩さーん。いらっしゃるー?」 「はいはーい」 田舎はチャイムより先にドアを開ける。 それだけ関係が密だと言うのもあるけれど、大抵の家がチャイムが鳴らないなど様々な理由により直接声かけた方が早いからが一番の理由。 丑而摩さんはこんな田舎に珍しくとにかく美形で。 「すみません。お待たせしました~」 奥さんに至っては既に別次元の美人である。 毎度彼女の顔を見たくて、話かけに来る奥さん達は多い。 美人で優しくて、料理上手。いつお家を伺っても笑顔で出迎えてくれて、しかもお土産に料理を分けてくれて。良い人過ぎる。 お蔭で彼女と同じく田舎に嫁いで来た私でも、こうして何の苦もなく住めている。 旦那と縁が切れたとしても、彼女との縁は切りたくない。 だから私も彼女には出来る限り手を貸そうと思っている。 思ってはいるんだけど、今日はちょっと違う案件で、私以外にも他の若い奥さん達が一緒だ。 「ふみみ?皆さん、ご一緒にどうされました~?ご飯食べて行きますか~?」 ニコニコ微笑んで現れたら直ぐにご飯に招待してくれるとか…うぅ、神…。 「それとも、疲れてる?ご飯持って行きます?それか何かお手伝い出来ますか?ひとまず中へ入ってお茶でも」 「あっ、ごめんなさいっ。今日はそうじゃなくて」 「ふみ?」 「丑而摩の旦那さん、帰って来てる?」 「いいえ?まだですが…大地に用ですか?」 「ううん。違うのよ。奥さん。実は私達の旦那も帰って来て無くて」 「今日は確か町内の飲み会でしたよね?今は、えっと九時…まだ飲んでいてもおかしくないですよ?」 「そうなんだけど…」 「…何か不安な事があるんですね。どうぞ話して下さい。協力出来る事はしますよ」 「…今日が町内の飲み会なのは私達も解ってるのよ?ただ、どうにも怪しいと言うか」 「そうそう。いつもなら飲みが苦手な男達はそろそろ帰って来てるのに、今日は誰一人も帰って来ないのよ」 「こう言う時って、いつも理由は決まってて。隣の町内の飲みがかちあってる時なのよね」 「あっちの方が絡んできて、いつも飲み比べになるのよ」 「帰ってくるとお酒臭いわ、愚痴ばっかりだわ、当たり散らすわ、翌朝は二日酔いだわ、で鬱陶しいのよね」 「あっちの町内が絡んでくるんだから仕方ないだろとか旦那達は言うけど結局飲み明かしてたら何を言って
「おーい、美鈴ー。メールが来てるぞー」「はーいっ!」大地が私の携帯を持ちながら、手を振っている。私は持っていた鍬を畑の土にぶっ刺し、大地の側へと駆けよった。結果から言って、あの時の私達の作戦は成功した。呪石を発動させて、その呪いを私と大地は受けて意識を失った。意識を失うまでの記憶が全くと言っていいほどに無いので、恐らく発動と同時に意識を失ったんだろうと思う。そんな意識を失いぶっ倒れた私達を発見したママは一瞬死んだものと勘違いして泣き崩れたらしい。けれど、そこに何故か駆けつけてくれた陸実くんが、『あの』陸実くんが私達の心臓が動いている事に気づいてくれた。その時点で私達に本来かかっていた呪いは制限時間を越えており、死んでいてもおかしくない状態だったのに、心臓が動いていたから呪いの上書きは成功したのだと解る。ママと陸実くんは私達を担ぎ急いで病院へと連れて行ってくれて、私達は無事意識を取り戻した。外傷らしき怪我はなかったから、私達は直ぐ退院をする事が出来た。とは言え、あくまでも私達がしたのは『呪いの上書き』だ。上書きと言う事は、私達が最初にかけられた呪いより、より強力な呪いが私と大地にかけられたと言う事になる。意識を取り戻した私達は、生き長らえたチャンスを得た事を喜ぶよりも、まず上書きされた呪いが何かを調べる事が先決となった。近江くんや愛奈、華菜ちゃんにお兄ちゃん達。金山さんや銀川さん、真珠さん色んな人に協力して貰ってやっと自分達の呪いが何なのかを理解した。私と大地にかけられた呪いは。『寿命の共有』の呪いだった。大地と私の寿命が足して2で割られてると考えて貰っていいと思う。ただここで注意すべきは、私の寿命はあの時で尽きていたと言う事だ。私は前の呪いの所為で寿命がギリギリの所まで来ていた。例えて言うなら、本来は私の寿命が2、大地の寿命を4だったとする。本来ならば合わせて6の時間を二人分で割って、互いに3ずつになる筈だった。だけどこの時の私の寿命はほぼ0に等しかった。大地の寿命が4とするなら、0+4で合計が4のまま。足して2で割られたら、大地の寿命を私が奪ってしまう事になる。私のこの命は全て大地のモノと言う事で、私は大地の寿命を縮めてしまったのだ。私は頑張った。この私だけにかかった呪いならまだしも、大地の寿命を私が吸収する呪いな
「いってぇー…。奏輔、少し手加減しろよー…」 「大丈夫?大地お兄ちゃん」 両方のほっぺがパンパンになるだけ往復ビンタされた大地お兄ちゃん。 触れるのも痛そうで、どうしたらいいだろうと私はおろおろした結果、透馬お兄ちゃんが持って来ていた救急道具に入ってた湿布を両頬に貼り付けた。 …何か一昔前の漫画であった虫歯のある少年みたい…。 「にしても、すげぇな、大地。お前一人でこんなのぶっ倒したんかよ」 「…鴇と戦うよりは余程楽だったよー。ただ固いだけでー」 「…鴇がこいつより強い事に驚くべきか、それともこいつを固いだけって考えるお前に驚くべきか」 透馬お兄ちゃんが溜息をつきながら呆れている。 「……こいつが隠しボス…」 「ママ?」 静かにママが隠しボスの側に歩み寄る。 一体何を探しているんだろう? 私は大地お兄ちゃんと顔を見合わせて、首を傾げた。 愛奈と近江くん、奏輔お兄ちゃんと透馬お兄ちゃん。四人もママの行動をただ眺めている。 すると、ママは腕を振り上げて、 「ママっ!?」 その隠しボスの胸に巨大な氷柱を突きたてた。 ボシュンッ。 風圧と同時に隠しボスは消えた。 ママは自分で隠しボスに止めを刺したと言うのに、愕然として膝から崩れ落ちた。 顔を両手で覆って肩を震わせている。 「ママ…?」 泣いてるの…? ……いや、違うっ。 膨れ上がる、この肌をピリピリさせる感じは…殺気だっ! 誰に向けられてるかって、そんなのっ。 私とママが動いたのはほぼ同時。ガキィンッ!大地お兄ちゃんの前に立ち、ママの氷の剣を私は薙刀で受け止める。 ギリギリと力と力がぶつかり拮抗する。 「……ッ、…何、するのっ、ママっ!」 「どきなさい、美鈴っ。貴女を助けるには、こうするしかないのよっ」 「意、味が、解んないんだけどっ!?」 渾身の力を込めてママの剣を払い、そのまま来る反撃に今度はこっちからも薙刀を振るう。 ギィンギィンッ。 剣と薙刀がぶつかり合う音が辺りに響く。 「私はっ、貴女の、呪いを解きたいだけよっ」 「それとっ、大地お兄ちゃんをっ、狙うのとっ、何のつながりがあるのよっ」 互いの武器を振るう速度はガンガン上がって行く。 「あるわよっ!美鈴にかけられた呪いは大地くんを経由しているっ!なら大地くんを殺せばその呪いは消えるっ!
梯子を降りて、地面に足が着いたと同時に辺りを見渡す。 すると真っ直ぐ先に玉座が目に入った。 近江くんと陸実くんが左右に守る様に立ってくれる…のはありがたいけど、怖いのでちょい距離を下さい。 一歩先に進み、玉座に歩み寄るとそこには『ただいま外出中』と雑に書かれた段ボールの立て札が置かれていた。 「……ママの文字だわ」 いや、解ってるよ。うん。 大地お兄ちゃんとのやりとりが色々あって、それでここを離れますって伝えたいのは解るよ。 でもさ?でもさ?黒のマジックペンででかでかと只今外出中って。ここまで結構気を張りながら来たのに、一気に台無し。 ママ急いで書いたんだろうなぁ…ペンも横に置いてある。 キュポッ……書き書き……『と見せかけて実は迷子』…これで良し、っと。 「……何をしてるでござる?」 「愛情を少々」 「……余裕でござるな…」 「どんな場所でも多少のゆとりは必要だよ」 さて、行こう。 奥の方に道がある。 真っ直ぐそちらへ向かうと、開かれた扉があってそのまま抜けると、足下を腕を組みながら見降ろしているママがいた。 「ママっ!」 「……美鈴」 私の名前を呼んでいながらも動かないママに疑問を覚えて、急いで側へと駆け寄るとママはどうやら穴を覗いていたらしい。 梯子がかかっている穴で、私達が今まで下の階に降りる為に通ってきた穴と同じだ。 先が真っ暗だから何も見えない。 穴の淵に膝を付けて、中を覗き込むと。 ドォンッ! とぶつかる音が聞こえて、軽く振動が手足から体へと伝わってくる。 しかも、その音と同時にカメラのフラッシュのような一瞬の光が見える。 「…もしかして…」 「…えぇ。大地くんが下で戦ってるわ」 「ちょっ、ママっ。どうして一人で行かせてるのっ!?」 「……そこから先は一人しかいけないのよ」 「何でっ!?」 言われて直ぐに梯子に手をかけようと試みるが、また見えない壁に阻まれた。 手の甲で叩いてみるとコンコンと音が鳴る。 さっき私達の道を阻んだ壁と一緒ならば、大地お兄ちゃんがその階を踏破しないとここは通れない。 でも、だったら、ショートカットコースに出来る筈だ。 となるとここの壁は理由が違うって事になる。 「ママ。どうしてここは一人しかいけないの?」 「隠しボスの間だからよ」 「隠しボスか…」
七階の横穴に入って、真っ直ぐ進む。 先頭に近江くん。後ろに陸実くんがいるんだけど…あれ?近江くんが少し下がってきた。 うぅん…ちょっと私も歩くペース落とした方が良さそう、かな? 近江くんと一緒に歩くスピードを落としたんだけど、一人それに一切気付かずにスピードアップしてる人がいる。 …止めた方がいいのかな? でもこれはこれで面白…げふんげふんっ。 近江くんが反応してないし大丈夫だよね、うん。 ずんずんずんずん。 私を追い越し、近江くんを追い越し。 ゴンッ! 「ほぎゃっ!?」 陸実くんが何かにぶつかった。 壁?石壁?そんな道の真ん中に壁ある? 「ちょっと待つでござる」 言いながら近江くんは、簡単に手元に明かりを灯す。何処から出したの?そのランタン。 大きさ的にポケットに入る大きさじゃないよね?それは突っ込み入れて良い事?悪い事? 私がツッコミいれるべきかむずむずしている間に近江くんは灯りと一緒に進み、おでこを擦っている陸実くんと並んだ。 二人の後ろから私も覗くけれど、壁らしいものはなさそ…うん? 今何かが反射した? 近江くんが手を出して、ドアをノックする要領で目の前を叩く。 コンコン。 まさかの音がした。 え?ちょっと待って。そこに壁があるって事? 私は陸実くんの横から顔を出して、手を伸ばしてみる。 そこには目には見えない透明な壁があった。 「水族館の水槽みたいだな」 「確かにアクリル板っぽいよね…」 コンコン。 私も叩いてみるが、かなり頑丈っぽい。 「何にしても行き止まりだよね?引き返す?」 「一本道でござるからなぁ。一つ上の階に行ってみるでござるか?」 「近江先輩、壁壊せたりしねーの?」 「ここの地下全部を破壊なら出来るでござるっ」 どやっ! 近江くん。それ胸張って言う事じゃないわー。 「おぉっ!じゃあ、それで行こうぜっ!」 「行けるかっ!」 思わずツッコミ入れちゃったじゃんっ! 「冗談でござる」 「えっ!?冗談だったのかっ!?」 「……近江くん。反省して」 「申し訳ないでござる」 陸実くんの前で不用意な事を言ってはいけない。 近江くんをしっかり反省させた所で、私は何か良い案がないかと腕を組んで確かめる。 そもそも何でここに透明な壁が出来たんだろう? だってさ? 周りを見る
それから、襲撃のある8日まで。私は、一日一回はあえて外出し、買い物をするようにした。と言うのも、お兄ちゃん達が、遭遇すると言う形を作りたいと言ったからだ。ゲームにより近づける為なんだって。私としてはお兄ちゃん達だけ危険な目に合わせるつもりは毛頭なかったから、即頷いた。むしろ一日一回で良いのかと聞き返してしまった位だ。けど余計なことをしてもまたお兄ちゃん達の計画を崩すだけだよねとちゃんと思い止まった。買い物をして、華菜ちゃんの家に帰って、華菜ちゃんのご家族の代わりにご飯を作って、パソコンを借りて一日分の仕事をして。これを数日繰り返した。…私、本当にこれでいいのかなぁ…?ちょっと不安に
「…美鈴?」声が聞こえて目を開くと、ママのドアップ。「美鈴。何をぼんやりしているの?早くその本を持って廊下に出てみなさい」そしてまたこのセリフ。私の手にはセーブの本。流石に二度も同じ事があれば、夢でも幻でもないって理解出来る。いや、元々夢の可能性は大分低かったんだけどね。そしてもう一つ、夢を否定するに思い至る理由がある。ここに、いつもママのドアップがあるこの時に戻る理由。こんな事現実的じゃないと思って、つい思考から排除してたんだけど…。でも…もう、そうとしか考えられない。私はやはり『手に持っていた』本を開いた。そこに書いてある文字は、私の文字。『ハートの意味が解らない。
私の視界は真っ暗闇の中。 ふっ。私を舐めないで貰いたいわねっ。 毎度毎度この真っ暗闇を見ていたら、もう分かるもんねっ! ズバリ、私は気を失っているっ!どやぁっ! ……。 ………。 ……………しくしくしく。全くもって威張れたことじゃないのよぅ…しくしくしく。 何で私はまた意識を失ってるのー…。 えっと…、私は何でこうなってるんだっけ?気を失う前は確か…。 確か私は旭と一緒に買い物した帰りに、旭に扮した表門の人に刺されてー…はて? そこから記憶がないと言う事は、私はあそこで気を失ったって事だよね? んで、今現在意識がない、と。そう言う事だよね? でも
※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。「姫。この鎖主体のデザインと、薔薇主体のデザイン、どっちが可愛いと思う?」「んー…、私としては薔薇の方が可愛いと思うんだけどー…、遠目から見てどっちが可愛いと思う?大地お兄ちゃん」「鎖デザインのネックレスと、薔薇デザインのブレスレットー。成程。姫ちゃんが一番可愛いー」「俺もそう思う。姫さんが一番可愛い」「確かに。姫が一番可愛いな」「ちょ、ちょっと三人共っ、デザインの話でしょーっ。私は関係ないでしょーっ。